Interview

●LUCK’AとしてPeople In The Boxのグッズ制作に関わったのは、いつからなのでしょうか?
加藤:『Frog Queen』(1stアルバム/2007年12月)の時だと思います。うちの会社を立ち上げたのも2007年なんですが、当時この音源を頂いたのは覚えています。(ジャケット写真にもある)キリンのキーホルダーを作りましたね。
●『Frog Queen』のタイミングが最初だった。
加藤:そこが一番最初だと思います。最初にキリンをキャラクター化したものがデザインデータのパーツとして送られてきたんですけど、それを使って何ができるかということを考えていって。そのパーツを使ってキーホルダーにしたのと、あとはキリンをデザインしたオレンジ色のタオルを作りましたね。
●“何を作りたい”という具体的なアイデアをもらっていたわけではない?
加藤:「こんな素材があります」ということでデータを頂いただけで、それをどういう形にしたら良いかは決まっていない状態だったんです。そこからのスタートだったので、まずはそのデータを色んなものに落とし込んでいって。Tシャツやタオルとか色んな案を出した中で、選ばれたものがグッズ化された感じですね。
●グッズを作る上で、明確な要望がない場合もあるんですね。
加藤:はい。もちろん「これを作りたい」と明確に言ってこられることもあるんですが、ざっくりとした相談もよくあります。たとえばキーホルダー1つにしても、素材次第で価格帯も変わってくるんですよ。People In The Boxの場合はこちらで浮かんだアイデアをアイテムにデザインを乗せて一緒に提示しつつ、マネジメント側と相談しながら作っていく感じですね。
●アイデアはどういうところから浮かぶんでしょうか?
加藤:僕は初見の音楽を聴くこともライブに行くことも好きなので、まずお話を頂いてからライブを観に行くところから入るようにしていて。実際に演奏や楽曲を聴かせてもらったり、ライブに来るお客さんを見て“どういうアイテムや価格帯がこのバンドには合うんだろう?”というところをデザインと並行して考えます。そこからマネジメント側とディスカッションして、制作に入る感じですね。“小ロットの時はこの手法が良い”とか、逆に“大きなロットの時にはこの手法のほうが安い”といった感じで選択していって、提案します。
●アーティスト側とも相談しながら、提案をまとめていく。
加藤:僕がなぜ音楽に特化したかったのかというと、音や詩というカタチのないものを具現化していく“モノづくり”をしたかったからなんです。本来なら来るもの拒まずで色んな業界の仕事を引き受けて数をたくさんこなしていくような会社のほうが不安は少ないと思う。音楽業界だけに特化するのは好きじゃなきゃ怖くてできないですね(笑)。
●取引先を絞ることにもなってしまいますからね。
加藤:そうなんです。それでも僕が音楽に特化したかったのは、音楽の情報が一点に集まったほうがクオリティの高いものが作れるし、色んなバンドとのアイテムやデザインの差別化も図っていけるので良いだろうなと思ったからなんですよ。元々は『SELDOM』という新星堂で配布されていたフリーペーパーの制作をしていてインディーズ界隈に関わっていましたし、知り合いもいたので、そこに特化した方がわかりやすいだろうなというのもあって。
●元からインディーズやアーティストとの関わりがあって、そういうところの状況も知っているからこそできることなのかなと。
加藤:アーティストのグッズは、アーティストの“分身”だと思っているんです。だから(そのアーティストのイメージと)全くかけ離れたものを作ったら、たとえそれが良いものだとしてもファンには届かないと思うんですよね。だから曲を聴いてライブを観て、リアルなところを知った上で表現するようにしていて。たとえば歌詞から派生したものを作ろうとすることで、当初は考えてもいなかったようなものができたりするんですよ。逆に何かを作りたいと明確に言われてしまうと、それしか作れないことになるので視野が狭くなってしまうから。
●表現や商品の幅を狭めてしまうことにもなりかねない。
加藤:アーティスト自身が発しているものもあるので、そこから自分たちが(イメージを)引っ張ったほうがファンにより届くものになると思っていて。それがこの業界“モノづくり”の基本だと思っているんです。そういう中でもPeople In The Boxの場合は、特に色んなものを作ってきましたね。客層を考えて、雑貨的な要素も意識しながら作ってきました。
デザイナー:People In The Boxのグッズって雑貨屋でも売ってそうなデザインだなと、以前から思っていたんです。私は元々ライブにも行っていて、物販を見て“ピンク色のグッズは可愛いし、よく売れているな”と感じていて。そういう視点から、女性向けかつ可愛くなりすぎないデザインを心がけています。
●実際にライブの物販を見て、実感したことも取り入れられている。
加藤:彼女は元々People In The Boxが好きで普段からライブに行っているような子だったんですけど、それって“憧れ”じゃないですか。やっぱり“好き”っていう気持ちは大きくて、自分の中でアイデアをひねり出すんですよね。僕ら以上にファン心理になりつつ、デザイナーとして“自分はこういうグッズが欲しい”という視点もあって。そこは武器だなと思うし、(そのアーティストを)好きな人がやることでブラッシュアップされる部分もあるなと感じています。
●好きだからこそ、ファン心理がわかるというのも大きい。
デザイナー:最初は純粋にファンということもあったんですけど、“自分が欲しいものを作って正解だったな”とここ5年間くらいやってきた中で感じられています。たとえば傘を全面にプリントしたTシャツや折りたたみ傘は自分でもすごく気に入っていて、“採用されたら良いな”という感じで提案したものが実際に採用して頂けたんです。やっぱり自分が気に入っているものは、結果も出るんだなと思いました。
加藤晴久
Designer
加藤晴久
Haruhisa Kato
音楽やデザインという感性ではメシは食えない!という自論を持つ親の元で育ち、一時はその道を絶たれスポーツメーカーに就職するものの、夢をあきらめきれずにバンタンデザイン研究所に入学する。その後、デザイン事務所に再就職をし、アパレル商社デザイン部門の立上げを経て、独立。株式会社楽日(ラッカ)を設立する。凛として時雨、RADWIMPSをはじめ数多くのアーティストのプロダクト・ディレクションを行う。

年間数万枚のバンドTシャツを世に輩出し、Tシャツ制作請負人の地位を確立していく。全国各地にプリント職人のブレーンをもち、様々なプリント手法によるデザインの再現性を追求し続けている。さらに、自身所有のインクジェットプリンターを熊本在住のブレーンに預け、アトリエ兼ファクトリーとして稼働させる。

2011年、かねてからの目標であった、カフェとギャラリーの複合店を奥原宿にオープンさせる。2016年12月、自身が編集長を務める媒体、共創メディア『LUCKAND』の発行に伴い、「LUCKAND-Gallery Cafe&Bar-」の名義で店をリニューアルし、未来のクリエイターたちの交流の場所として発信を始める。また、2017年より、これまで培ってきたプリント技術と日本に数台しかないインクジェットプリンターを駆使し、様々なクリエイターの作品をTシャツにプリントして展示する【TaG】(T-shirts Art Gallery)を開始する。