Interview

●今お話に出た、傘を全面にプリントしたTシャツはかなり売れたそうですが。
加藤:すごい枚数が売れましたね。それはデザインに合うTシャツの生地の選定や印刷の手法と、今まで作ってきた“People In The Box像”がマッチしたからだと思うんですよ。デザインができても“それをいかに具現化するか?”という問題があって。それなりに工場や職人さんを知らないと、できない部分もあるから。
●アイデアを具現化するにも、技術的な面がクリアできないと実現できなかったりもする。
加藤:今まで構築してきた職人さんとの関係値もあり、全面プリントをきれいにできる工場も知っているから、“こういうデザインはどうですか?”って提案できたんです。僕らだけの力ではなくて、職人さんあってのものではありますね。あと、価格帯も良いところに落とし込めたので、お客さんも気負うことなく購入できたというのがヒットした要因だと思います。
●これはDVD『Cut Three』(2014年4月)リリース時のツアーで販売されたアイテムだそうですが、デザインのアイデアはどういうところから生まれたんでしょうか?
加藤:People In The Boxは「空から降ってくる」という企画を毎回やっているので、そこからですね。“何が降ってくるのか?”ということを考えて、モチーフを事前にいくつか用意してあるんです。だからデザイナーもさっとTシャツのデザインに落とし込んできて、これを見た時に僕も“イケる!”と思ったんですよ。
●最初に見た時点で、良いなという直感はあったんですね。
加藤:はい。そこから“これをいかに形にするか?”や、“いかに価格帯を抑えて実現させるか?”というところをクリアにした上で提案して。一発で決めるためには、価格帯も最初に伝えないといけないんです。「確かにすごいけど、高いんでしょ?」ってなるとまた振り出しになってしまうので、そういうところも1回目で出したほうがスムーズに進みますね。
●価格帯の見込みもきちんと調べた上で提案している。折りたたみ傘もヒット商品だそうですが、こちらも最初から確信があったんでしょうか?
加藤:僕自身は売れると思っていましたね。それはやっぱり、音楽性と一緒で今まで作り上げてきたPeople In The Box像があるからなんですよ。そこがないと、いきなり良い傘を作ったところで売れないんです。でもPeople In The Boxの場合はイメージがしっかりあるので、作れば売れるという予想はついていました。あとはそこに踏み切れるかどうかというところで、マネジメント側としては(原価の)高いものを作るわけですから当然リスクを背負うじゃないですか。
●万一、売れ残った場合は損失が出てしまうわけですよね。
加藤:作りたいとは思っていても、色んな兼ね合いがあって。慎重に進めていったんですけど、最初に作った数が速攻で売り切れたのでさらに追加をかけることができて、結果ヒットにつながりました。
●折りたたみ傘の他に時計も作られたりしていますが、これまでにPeople In The Boxと関わってきた中で何か難しい要求はありましたか?
加藤:逆に言うと、People In The Boxの場合は要求がないんですよ。でもメンバーが発している曲自体が僕らにしてみれば、すごい要求になっているんです。波多野くん(※Vo./G.波多野裕文)の書く歌詞はつかみどころがないので、その世界観の“どこをどう引っ張れば良いか?”というのが課題になっていて。それを踏まえた上でアートワーク(ジャケット・アーティスト写真)も作られていて、そことも(グッズのデザインを)つなげなくてはいけないという時点で既に“要求”になっているんですよね。
●作品からどう読み取ってデザインにつなげるかが、People In The Boxの場合は難しい。
加藤:そうなんですよ。まず作品を聴いてからデザイナーと一緒にディスカッションするんですけど、“挑戦”という感覚に近いですね。メンバーの感性と、僕らが作品を聴いた上で感じ取ったものというところで、お互いの感性をぶつけ合う感じだから。そこで通じ合えれば、(メンバーも)「良いです!」となるんです。
デザイナー:People In The Boxの場合は、“その時の感性がピッタリくるかどうか”という面があって。曲や歌詞から動物の名前だったり何らかの単語を引っ張ってきて、そこからイメージしてデザインすることもありますけど、やっぱり歌詞が抽象的で深いから…。会社には他にもデザイナーが2人いるので、社内コンペみたいな感じでアイデアを出し合っていますね。それぞれが曲を聴いて浮かんできたものを昇華していくという感じです。
加藤晴久
Designer
加藤晴久
Haruhisa Kato
音楽やデザインという感性ではメシは食えない!という自論を持つ親の元で育ち、一時はその道を絶たれスポーツメーカーに就職するものの、夢をあきらめきれずにバンタンデザイン研究所に入学する。その後、デザイン事務所に再就職をし、アパレル商社デザイン部門の立上げを経て、独立。株式会社楽日(ラッカ)を設立する。凛として時雨、RADWIMPSをはじめ数多くのアーティストのプロダクト・ディレクションを行う。

年間数万枚のバンドTシャツを世に輩出し、Tシャツ制作請負人の地位を確立していく。全国各地にプリント職人のブレーンをもち、様々なプリント手法によるデザインの再現性を追求し続けている。さらに、自身所有のインクジェットプリンターを熊本在住のブレーンに預け、アトリエ兼ファクトリーとして稼働させる。

2011年、かねてからの目標であった、カフェとギャラリーの複合店を奥原宿にオープンさせる。2016年12月、自身が編集長を務める媒体、共創メディア『LUCKAND』の発行に伴い、「LUCKAND-Gallery Cafe&Bar-」の名義で店をリニューアルし、未来のクリエイターたちの交流の場所として発信を始める。また、2017年より、これまで培ってきたプリント技術と日本に数台しかないインクジェットプリンターを駆使し、様々なクリエイターの作品をTシャツにプリントして展示する【TaG】(T-shirts Art Gallery)を開始する。