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People In The Boxの10周年イヤーを記念して、特設サイト上で行ってきたインタビューシリーズの最終章は“People In The Box × People In The Box”。これまではバンドの音楽制作やヴィジュアル面などに関わる周囲の人々から話を訊いてきたが、最後はメンバー3人に特別対談という形で自ら語ってもらった。某居酒屋に集まった波多野裕文・福井健太・山口大吾が、10周年やニューアルバム『Kodomo Rengou』の話からバンドのあり方に至るまでをざっくばらんに語り合う…。

People In The Box × People In The Box #1

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●まずは10周年を迎えた今年1年を振り返ってみて、どんな年でしたか?
波多野:アルバムを作っていたというのもあって、まだ“振り返る”というよりも”現在進行形”感があります。
山口:一昨年よりは忙しかった感じですね。
福井:ライブも去年より、いっぱいやったんです。本数だけじゃなくて、今年は1本1本のライブをちゃんとやったという印象があります。
●それはどういう意味で?
山口:今年は、自分たち発信で動くライブが多かったんです。これまでのワンマンツアーは1つのテーマだけでまわっていたけど、あえて3本だけのツアーを毎回テーマを変えてやったりもして(※10月に東名阪で開催した“Tour N A Z O”)。そういうことは、今年だからできたのかもしれない。“10周年だから何かやろうか”という部分は大きかったんじゃないかな。
波多野:1本1本のライブの意味について、話をするようになりましたね。だからスケジュール上ではまばらな点のように見えていても、実際には各々で考えることが多かったり、準備にすごく時間をかけたりしていたので、自分たちの体感的には濃い1年だったという気がします。
●表面的に見えている部分以上に、自分たちとしては濃い時間が過ごせた。
山口:実際に今年は、良いボリューム感で稼働できたと思います。ちゃんと休む期間もあったし、その期間でツアー中にインプットしたものや今まで考えていたようなことをアウトプットに充てられたりもしたんです。ライブでも、もう新作(『Kodomo Rengou』)の曲をやっていたりして。今までもそういうことがなかったわけじゃないけど、新曲をレコーディングする前にライブでやるということがいつの間にか普通ではなくなってきていたというか。
●バンドとして活動が長くなるほどに、そうなったりはしますよね。
山口:そういった意味でも“初心に帰る”感じは、活動の中であったんです。アルバムを制作する期間もちゃんとあったし、ツアー中に新曲をやって身体の中に叩き込む感じもあって。そういう時間に充てられたので、良い10周年だったと思いますね。
●“初心に帰る”感じもあったと。
波多野:色んな行為の1つ1つを洗い直さないと、自分たちの中で腑に落ちないことが出てくるなと思って。“順序”がすごく大事というか。”アルバムを発売するから曲を作る”という順番じゃなくて、“作ったものが集まってアルバムになる”ということをやってみたいという話はしましたね。
●アルバムに向けて曲を作るのではなく、曲が貯まったからアルバムを作るというのが本来の在り方というか。
波多野:僕らの場合そこはどちらでも良いんですけど、結果としてそうなっていることが腑に落ちなくて。自分たちの中で“意味”を咀嚼した上でやることと、そうじゃない場合とではだいぶ違ってくるなと思うんです。たとえばツアーで1本1本のライブの中に、“自分たちにとっての意味”というものをしっかり含めることもそうで。ツアーって自分たちの音楽を携えて全国をまわるという意味で“外向き”の行動ではあるんですけど、それと同時に自分たちの“内的”な行動でもあって欲しいんですよ。
●何がキッカケで、そういう想いを抱くようになったんですか?
波多野:今の現状をしっかりと把握したいという気持ちからですね。自分たちの人生もそうだし、今の時代観も含めての話ですけど、それって当たり前のことだと思うんですよ。震災後(※2011年の東日本大震災)くらいから“地に足がついた活動をしたい”というのが自分たちのキーワードになっていて、ここ2年くらいはそういうことが本当の意味でできるようになってきている感じがしますね。静かで力強い活動ができているなと思います。
山口:この1年は、今後の活動のモデルにもなりましたね。
●そういった部分も、10周年という機会だからこそ固められたのでは?
波多野:そもそも僕らにとっては今回の“アニバーサリー”というのは、無理矢理探してきたみたいな感じなんですよ。47都道府県ツアー(※2015年3月〜11月のワンマンツアー“空から降ってくる vol.8 〜正真正銘の全国ツアー!これ以上の全国ツアーってある?ねぇー?ねぇぇぇーーー? 編 〜”)をやると決めた時に数え間違って、そこが10周年だと勘違いしていたほどですから(笑)。
●47都道府県ツアーをやった2015年が、元々は10周年のつもりだったと。
福井:最近のライブ活動で言えば、この前まわった“Tour N A Z O”は1本1本違うコンセプトでやったことで新しい曲への理解を深められたり、新しい方法も発見できたなと思っていて。今まわっている“10th Anniversary TOUR 「Z E R O」”は、個人的にはしっかり演奏してグルーヴを高めて盛り上げたいと思っているんです。10周年だから振り返るというだけじゃなくて、そういうことが今年は多かった気がしますね。
●ただ過去を振り返っただけの10周年ではない。
波多野:実際にライブをやるまで、自分たちのモードって案外わからないところがあって。テーマを決めて実践した時の感覚が予想していたものとはちょっとズレがあったりするんですけど、そういうのがすごく良いというのは今までの経験からも体感的に知っているんですよね。今回のツアーも始まってみて、“現在進行形じゃん”と気付いたというか。自分たちの原点を辿るツアーなんですけど、原点を意識するからこそ“自分たちがどれだけ前に進んでいるのか”を体感として理解できるという。そういうところも含めて、“生きているんだ”と実感しました。
●ベストアルバム『Things Discovered』を出したのも10周年だからこそだと思うんですが、そこで改めて過去の楽曲を聴き返す中で感じたこともあるんじゃないですか?
波多野:僕は本当に(過去の音源を)聴き返さないんですよ。それが良いとか悪いとかではなく、自分にとってはすごく良い機会でしたね。
福井:昔と比べることって、そういうタイミングじゃないとやらないから。
●大吾くんは聴き返すことはある?
山口:ありますけど、“聴き方”が違うと思います。聴きたいから聴くというのではなくて、目的が違うというか。
●というのは?
山口:10年の間で少なからずフレーズやノリみたいな部分が、(録音時とは)徐々に変わってきているものなんですよ。10周年のタイミングで、昔はやっていたけど今はやっていない曲をやる機会がどんどん出てきて。そういうものは正直(過去の音源を)聴き返さないと、身体が覚えていないんです。
●身体が覚えていない?
山口:昔は自然にやっていたことが、そこに別のものが入ってきたことでいつの間にか抜けているんですよね。僕の場合だったら別の現場で得たものだったりもするんですけど、それがあるからこそ活きている部分ももちろんあるので良い部分だとは思うんですよ。でも元々そこにあった部分を使って曲を再現しないといけない時には、引っ張り出してこないといけないわけだから。そういった意味で、聴き返しています。
●ライブで演奏するにあたって、当時の感覚を呼び戻すためというか。
山口:10年の間で身体で覚えているところが徐々に変わってきていることの、良さと悪さがあって。久々にやるとなった時に、今の自分のモードしか身体には入っていないから。そこを元の感覚に戻すのか、今の感覚でそれに対してアプローチするのかというところがあるんです。やっぱりそういう部分を混ぜて出さないと意味がないので、そういった意味で聴き返すんですよ。そこにあるものに対して、今のモードでやらないと意味がないんですよね。
●単に過去の音源をそのまま再現するのではなく、今のモードで表現しないと意味がない。
山口:再現じゃないんですよね。吹奏楽みたいな再現音楽もやってきた人間だからそういうものの良さもわかるんですけど、“自然にそうなっちゃった”というわけではなく、ちゃんと狙ってやっていかないといけないのがバンドやミュージシャンだと思うんです。たとえば「今までここはff(フォルティッシモ=とても強く)でやっていたけど、あえてp(ピアノ=弱く)で表現してみようか」ということをできるのがバンドの良さだったりするし、バンドだから許されることだと思っていて。そういうのは、他の現場を経験しないとわからなかったことですね。
●People In The Box以外の現場で活動していく中でわかった、バンドの良さがある。
山口:他の現場でやるのは自分の曲ではないので、そういうことは許されないんです。それに対して、今の自分としてアプローチしてみることはありますけどね。「こういう感じで音楽的に捉えているので、こういうドラムのアプローチをしたい」ということを言葉じゃなくてドラムでやるべきだし、そこで「今の良かったね」となれば採用されるっていう。
波多野:良い話! 音楽が流れていて、それが聴こえている時間ってみんな一緒じゃないですか。そこにどれだけの背景があって、本人がどれだけのことを考えて、どれだけの想いを込めるかというのは、表面に出ると思うんですよ。ミュージシャン自身がそれをどれだけ信じられるかという見えない奥行きが、ほとんど全てだと思うんですよね。だから弾いているものが複雑とか簡単とかいうことではなくて、まず“俺の矢印はこういう形だ”と示すところを僕は一番大事にしているんです。僕は外ではあまりやっていないですけど、大吾が言っていることはすごくよくわかりますね。
●健太くんはどうですか?
福井:わかります。僕も外で活動する中で、取り入れてくるものもあったりして。その曲の中で今の自分ができることをちゃんと表現できるのがミュージシャンかなと思っているので、そこは意識していますね。
People In The Box
People In The Box
People In The Box
Vo./G.波多野裕文
Ba.福井健太
Dr.山口大吾