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People In The Box × People In The Box #2

●昔に比べて、個々の進化も実感できているわけですね。
山口:進化していなかったら、ここにいないですから。進化しないと、置いていかれるんですよ。たとえば4人組バンドの出す音が“服を着ている”感じだとしたら、3ピースの音は“一応服は着ているけど、ほとんど裸”みたいな感じなのですごくシビアなんです。
●ほう…。
山口:それは音楽的な部分もあれば、人間関係的な部分もすごくあって。4人組とかもっと人数の多いバンドと比べると、すごくシビアなところがあるんです。バンドの状態として3ピースバンドは、色んな意味でギリギリだと思いますね。
波多野:全然、気を抜けないんですよ。最悪ですよ!
●最悪なんだ(笑)。
波多野:自分でも“よくPeople In The Boxでギターヴォーカルをやっているな”と思います。“弾けねぇよ!”みたいな。
山口:でもそれは自分が当時のセンスで作ったものですからね。
波多野:そうなんです。残念ながら時々あるんですけど、どこかで音楽が聴こえてきて“何この和声!? めちゃくちゃ好みなんだけど!”と思って、よく聴いてみたらPeople In The Boxの曲だったりするっていう(笑)。
●ハハハ(笑)。客観的に聴いて、自分でも本当に好きだと思えるものを作れている。
波多野:そうです。だから、People In The Boxのギターヴォーカルは僕にしかできないですね。
●決め台詞が出ましたね(笑)。
山口:自分では言いづらいけど、リアルにそうなんですよね。だから切磋琢磨している人がメンバー3人中の2人とか1人だったりすると、絶対にバランスが取れないんです。でも僕の経験上では、それが4人とかになってくると(そういう状況でも)何となくいけちゃうんですよ。3人だと音楽的に丸裸の状態でみんな演奏しているから良いアプローチも目立つぶん、逆に悪いアプローチも目立っちゃったりして。
●人数が少ないぶん、良いところも悪いところも見えやすくなってしまう。
山口:難しいポイントは色々ありますけど、ここまでやれているというのは良いバランスでやれているということなんですよ。今まで10年間でやってきたことを、より分厚くしたいなという感覚はありますね。中身を濃くしていくというか。何が起きても“あっ、そう”という感じで、グラグラしない感じだと良いなと思っていて。ただ俺が思うに、まだそこまで行けていない。だから、まだ伸びしろはあります。
●自分たちの伸びしろを感じられている。
山口:僕はそうですね。
波多野:僕も今回の新譜を作って、“まだ成長曲線があるんだ”という喜びと絶望みたいなものを感じたんですよ。
●絶望…?
波多野:“まだ頑張り終えてないな”っていう。
山口:新作ができてすぐくらいの時に、2人で「まだ制作意欲があるよね」と話していたんですよ。
波多野:あれはお互いにゾッとしたよね。“こいつもか!?”みたいな(笑)。
●新作を作り終えたばかりなのに、まだまだ新しいものが作れる感覚があったと。
山口:そういう感覚はあります。今作は全員で1から10まで作ったというよりも、5くらいまでのラインを誰かが作ってきてから3人でバンドの形にすることが多かったんです。そこで出来上がったものを聴いた時に、自分の中で“まだネタはあるな”という感じで。(波多野に)訊いてみたら「俺もある」と言っていたので、“すぐ次のアルバムもできるわ”と思いましたね(笑)。
●制作意欲が尽きないんですね。
山口:曲を作っていると、色々と見えてくるんですよ。今までとは音楽の捉え方が違うから。それはPeople In The Boxの制作でも他の現場でもそうだし、全てにおいてプラスになっているのが自分自身でもわかるんです。だから制作意欲も上がっているのかもしれないし、パッと浮かんでくるフレーズも多くて。その都度ボイスメモに録音したりはしているんですけど、それを音として具現化していくのは不慣れなところがあるのでまだ時間はかかってしまいますね。
波多野:今まではバンド3人で曲を作っているとは言っても、曲の方向性を決定づけるのは僕だったりしたんですよ。でも大吾が作ってくる曲は今までは断片だったものが、今回はしっかりした時間の推移があって。僕はその推移が“曲作り”だと思っていたから、今回は本当の意味で“メンバー全員で作った”という感じがしますね。
●今までとは曲を持ってくる形が変わった?
山口:今まではリズムパターンだけを投げることが多くて、それを元にして作ったものがほとんどだったんですよ。
波多野:今回はもう曲ができていましたね。
●持ってきた時点で既に曲の形を成しているものが多かったんですね。
山口:そういう感じで投げていくんですけど、自分ではどうしたら良いのかわからないところもあるんですよ。“コードがこうきたら、次はこうだろう”という音の感じとかに関する知識や経験がまだ足りないので、そこは波多野ちゃんに書いてもらっているんです。
波多野:それって、めちゃくちゃロマンのある行為で。僕は映画の1シーンをもらったような気持ちなんです。その1シーンを元に僕が最初から最後まで作るという…、こんなに楽しいことはないですよ。
●そういう楽しさが今まで以上に増した?
波多野:でも案外リズムパターンだけをもらっていた時もそうで、映画の中のセリフを1つもらうような感じだったというか。“そのセリフが映画の中でどういう感じで使われるんだろう?”というところからどんどん前後ができて(物語の)ヤマができていくということをやっていたので、今回はそれよりもさらにやり甲斐のある問いかけをもらったという感じですね。
●健太くん発信の曲もそういう感じでしょうか?
波多野:健太もそういう感じですね。M-4「世界陸上」は、健太の持ってきたリフから作ったんです。元々は『Things Discovered』のメンバープロデュース曲用に作ってきたものなんですけど、その時点ではまだグダグダだったんですよ。
●その時点ではまだ使えない状態だったと。
波多野:でも断片としては可能性があるなと感じていて。People In The Boxの楽曲としてだったら、良い形に昇華できるなと思っていました。だから今回はやり甲斐もすごくあったし、実際にやるとなったら僕は完全に“自分の曲”にできちゃうんですよ。自分が持ってきた曲じゃないから距離感があるとかいうことは全くなくて、むしろ誰かにもらったほうが入り込めるというか。そっちのほうが、良い意味で客観的に“映画監督”になれるんです。歌は任せてくれるので、言葉でも遊べますからね。
●歌詞やメロディは波多野くんが考えている?
山口:メロディラインとかは入れていないですからね。メロディラインに関しては、歌詞の譜割りと最終的にはリンクするポイントがあると思うんですよ。でもパッと浮かんで、“ここはこういうメロディを入れて欲しい”と思うものは自分で入れるようにしています。たとえばM-2「無限会社」のサビは、メロディが元々あって。ここは全メロディとサビをメンバー全員でユニゾンしているというイメージで作りたかったんです。
波多野:それがヒントになったりもするし、そういうやり取りが一番楽しいんだなとは思いました。“橋本絵莉子波多野裕文”も、そういうやり取りが多かったんですよ。People In The Boxに戻ってきてからもまたこういうやり取りができて、“俺はどれだけラッキーな星の下に生まれたのか”と思いましたね(笑)。
●誰か1人がリードするわけじゃなくて、この3人でバンドをやっている意味がちゃんとあるというか…。
波多野:…何かちょっと美しいところに着地させようとしていません?
●ハハハ、バレましたか(笑)。
波多野:僕、そういうのに目ざといですよ。でもそんなに甘いものじゃないんです。“やっぱりこの3人だよな”みたいな、ヌルい感じでやっているわけでは決してないから。僕はすごく良い意味で、2人に対しては一番気を遣っているかもしれない。
●それはどういう意味で?
波多野:遠慮はしないけど、気は遣っています。それは“3人がベストじゃないといけない”という気持ちがあるからなんですよね。“みんながベストな状態をこの土俵で出す”ということをすごくやりたくて。このバンドをやっているというのは、主観的に見ると単純に“僕の意志”だと思っているんですよ。もちろん他の2人もそう思っていたら嬉しいんですけど、結局は自分の行為なので“僕がこれを諦めるわけがない!”という感じで。要するにバンドって“甘えて良い場所”なんですけど、僕の意志としては“絶対に甘えない”っていう。
●甘えて良い場所だけれども、決して甘えない。
波多野:僕は最終的には一番“おんぶに抱っこ”されている立場なんですけど、そういう気持ちは一切ないかな。
山口:自分でも曲を作り始めたことで、“このバンドを大切にしないといけない”という気持ちが増幅されているんですよ。さっき「バンドじゃないとできない音楽がある」という話をしたんですけど、そのニュアンスというのを自分では掴んでいて。だから今回、僕が作った曲は変な曲が多いんですよね。
波多野:確かに変ですね。
People In The Box
People In The Box
People In The Box
Vo./G.波多野裕文
Ba.福井健太
Dr.山口大吾